カザフスタンという国から離れて2年半が経ちました。良い思い出もたくさんあり、出会った人たちのことや、あの冬の極寒の空気、一面に広がる地平線など、懐かしく思い出すこともあります。ただ、懐かしい…くはあるのですが、また住みたいかというと、それは別の話で。時経つうちにいい思い出だけが残るという感じですね。
カザフスタンにはなかなか受け入れにくい「常識」があって、それは長く住めば住むほど強烈に感じるようになっていたというのが本音です。その一つが今回のテーマの「お金」あるいは「金銭感覚」。セルビアも色々ありますが、カザフスタンのレベルはやっぱり尋常じゃないなと。どんな金銭感覚なのか、振り返ってみました。
スーパーのお釣りはどんぶり勘定。でも店側が決して損をしないようになっている
どいうことかというと、スーパーに言って買い物をし、例えば合計金額が1062円(わかりやすくするため現地通貨ではなく円で書きます)だったとします。こちらが1100円支払うと、お釣りで戻ってくるのは38円になるのですが、大抵の場合、戻ってくるのは35円とか、30円とか。店側が損をしないようにどんぶり勘定でお釣りを渡してきます。どんぶり勘定なら、38テンゲお釣りの場合は四捨五入で40テンゲもよくない?と思うのですが、そこは絶対に譲らない。別に1円、5円くらいのものなんで、ケチケチするな、と言われればそれまでなんですが、毎回のことになると、何となくイラっときます。
ちなみに、セルビアも似たように最後の1ケタをきっちりしないことがありますが、セルビアは3円足りなくても「オーケー」といってくれますし、お釣りは多めにくれることのほうが多いです。そう思うと、やっぱり「カザフスタンはケチ~」と思ってしまう…。
相手は損をしてもいいけど自分は損しないように…という感覚はこんな小さなところだけでなく、さらに「借金」という形で表れます。
借金をするのは当たり前。お金を貸さない人=優しくない人
カザフスタンは、親族や知り合いにお金を借りることがしょっちゅうです。別にそれが悪いこととも恥ずかしいこととも思わない人たちが結構います。もちろん、皆が皆というわけではなく、どんなにお金に困っていても、それを表に出さないで自分で何とかしようとする人たちもいますが、かなり少数派。
一般市民の懐事情はさほど良くないため、貯金は当然ほぼなし、仕事に行っても給料を払ってもらえなかったり、ある日突然仕事を失う人たちも多い、という事情も手伝ってのことか、お金を貸し借りすることは日常茶飯事に行われています。
そういう状況の中で、お金を貸さない人になると、どうなるか。「あの人はケチだ」「人助けが嫌いな人だ」などというレッテルをはられることになります。ハッキリ言って、私はそうは思いません。借金をする人の場合、本当に自分にはどうしようもない状況で困っている人というのはほんの一握りで、大抵の場合は、使えるときにあるだけ使ってしまえ、という計画性のなさ、「困ったら誰かに借りればいい」という甘い考え方、怠慢が原因のことが大半だと思います。そういう人たちにお金を貸さないからといって、ケチ呼ばわりされては大迷惑な話。
そもそもお金を貸したくない人には次のような真っ当な理由があるんです。
ほぼ100%、貸したお金は期日までに戻ってこない
私の夫も、前述のような社会事情から、カザフスタンでは知り合いにお金を貸してあげたり、後払いで仕事をしてあげたり、ということが結構あったのですが、私の知る限り、
- 「来週返します」→ 3か月後にようやく回収
- 「来月返します」→ 2年かかってようやく回収
というように、ほぼ100%期日には貸したお金が戻ってきません。借金した人にこちらから連絡をしない限り、永遠に戻ってこないと思ったほうがいい。何度も電話して、リマインドして、ようやく戻ってくるという感じです。貸す側としても、毎回、そうやって「いつお金貸してくれるの?」と聞くのはきまりが悪く、なんていうか、モヤモヤ感がいつもあって私はダメでした。
借りる側の神経はいったいどうなっているのか…。何カ月も返さずに平気でいられることに、感心してしまいます。こうやって借金に借金を重ねてまわるカザフスタンの社会。でも借金が戻ってこないせいでビジネスが回りにくくなっている人がたくさんいるのは否めません。
しかし、プレゼントとなると「相手は損をしてもいいけど自分は損しないように…」という感覚はどこへやら。またこれは見栄っ張りもいいところなくらい、豪勢だったりします。
結婚式のプレゼントが半端なく高価
これは、カザフスタンの中でも、アジア系で親族のつながりが深いカザフ民族によくある話なのですが、親類の誰かの結婚式となると、プレゼントが半端なく高価で、日本の一般人の私は度肝を抜かれました。
自分の子どもが結婚する場合、親は新居や車をプレゼント。親以外の親族は、システムキッチン一式とか、家具とか、カーテン一式とか、とにかく新生活に必要になるものはすべて親族がプレゼントします。
そして、それらのプレゼントは、それだけ高価なのでやはりローンを組む必要があり、親や親族は銀行でローンを組んでそういうプレゼントを買うということです。親族の中で立て続けに結婚式があったらもう大変。皆ローン地獄で苦しむことになります。しかも、そういったプレゼントは、被らないで済むように、新郎新婦側から誰が何をプレゼントするか指定することもあるそうな。。。
それで、2,3年で結構離婚してしまうことも最近は多いので、親族はかわいそうとしか言いようがありません。。でもそういう「しきたり」だかしょうがないと思っているようです。
大盤振る舞いなのか、ケチなのか、よくわからない金銭感覚。これだけは、どれだけ長く住もうと慣れることはできなかっただろう...、と振り返って思います。今住んでいるセルビアも経済事情はカザフスタンと同じレベルくらい良くなく、公共機関などではスリも多いですし、お金がらみで苦労しているという話も現地の人からは聞くのですが、カザフスタンから来た私たちにとっては、まだ常識的なほうだと、ホッと心をなでおろしているところ。
以上、今回は「カザフスタンの常識は日本の非常識 - 金銭感覚編」でした。また色々思い出したら追記しようと思います。