過去1年で15万人のロシア人がセルビアに移住。現地の状況を在住者の視点で書いてみました

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セルビアはヨーロッパの南東部、バルカン半島に位置する人口800万人ほどの小さな国です。ここに、過去1年で約15万人のロシア人が移住してきました。

今回は、なぜセルビアにロシア人が15万人も移住してきているのか、現地の生活で感じている変化についてまとめたいと思います。

数値データの部分は情報源を載せるようにしていますが、その他は主観が入っている部分も多々あると思いますので「こういうことを感じている人がいるんだ」という程度で受け止めていただければと思います。

ロシア人がヨーロッパの小国セルビアに移住するワケ

セルビアは以前からロシアとの関係が良好で、国同士の関係だけでなく、個人レベルで「ロシア人は自分達の兄弟」と思っている人たちが多くいます。セルビアに移住するロシア人は以前からいて、私たちがセルビアに移住した7年前でも、首都ベオグラードにはおよそ3〜4千人が住んでいたと記憶しています。

それでも、経済難が続くセルビアより仕事が見つけやすいヨーロッパ各国に移住するロシア人は、数としては断然多かった。それが1年前からの世界情勢の変化により、本国での状況を懸念して他国へ逃れるロシア人たちにとって、行き先の選択肢はあまり多くなくなっています。

現在はカザフスタン、セルビア、ジョージア(グルジア)、アルバニアが主な移住先のようです。アメリカに亡命するロシア人もいますが、これには結構な覚悟が必要そうでした(知り合いの家族がメキシコ経由でアメリカに亡命しました)。

セルビアは、未だEU圏でもなく(EU加盟を目指しているものの)、ロシア人はビザなしでの入国(30日間)が可能。長期滞在のためのビザ発給も基本問題ありません

30日以内に隣国に出国し、入国してまた30日滞在、というのを繰り返しながら滞在する人たちもいます。(ただし、この方法での滞在は今後厳しくなるとの情報が数日前に入ってきました。)

私の主人はカザフスタン出身なので、カザフスタンの状況も少し耳に入ってきます。カザフスタンにはなんと100万人以上のロシア人が移住したとのこと。それまではロシア人の人口比は減る一方だったのに、急激に都市が一つ増えるくらいの人口増です。カザフスタンは、旧ソ連の国なのでかなりの人がロシア語が話せます。地理的にも近く、比較的かんたんに移住しやすい国です。

セルビアはカザフスタンと比べると、地理的にはロシアにさほど近くありません。言葉は同じスラブ語系ではあるものの、ある程度生活に困らない程度に話せるようになるには3〜6ヶ月ほどかかります。そんな不便があるものの、セルビアを移住先に選ぶ理由、それは人が優しいことと、気候がよいことではないか思います。

セルビアの人たちは外国人・子供に優しい

個人的にも感じていることですが、セルビアにいて人種差別的な扱いをされたり偏見の目で見られるというような思いをしたことはほとんどありません。(知り合いのセルビア人には「ここの人は隣国とか家庭内とか、近い関係の人とは問題を起こすけど、外国人には優しいのよ」といわれてなんだか納得してしまったことも・・・)。セルビア人とぱっと見では見分けがつきにくいロシア人はなおさら、居心地は悪くないと思います。

ロシアからきている人たちは小さい子供たちを連れた家族れも多くいます。バルカン地方全体で言えることだと思いますが、子連れの家族に対してとても理解があるため、非常に住みやすいです。

  • バスに乗ればすぐに場所を譲ってくれる
  • スーパーのレジで並ばずに会計をさせてもらえる
  • 公共の場所や街角でぐずっても嫌な顔する人がいない

などなど。私も、特に子連れになってからは見知らぬ人に本当に親切にしてもらうことが多いように思います。

また、役所の対応も、日本ほどではないにしても親切な人が多く、ビザ申請にお金がかかること意外はあまりストレスになりません。

カザフスタンの場合(をまた持ち出してしまいますが)、ここ数年でカザフ語の教育を強化したり、道路標識からロシア語を排除するといった変化が起きています。カザフ人とロシア人は民族・宗教の違いもあるため、共存はできるものの関係は微妙だったり…。また、ビザの申請手続きをする移民警察などのお役所は、電話応対しない・長蛇の列なのに受付窓口が少ない・書類が1箇所間違っているだけで出直し、と言った対応が多いのも、外国人にとってストレスの原因です。

セルビアは暖かい

セルビアは、ロシアに比べて気候が温暖です。ロシアは寒い国だからロシア人は寒さに強い、と思ってしまうのですが、皆が皆そういうわけではないです。寒さが苦手な人は暖かい国に移動します。

ロシアの多くの地方に比べてもカザフスタンは寒い!です。カザフスタン北部に位置する首都のヌルスルタンは冬場はマイナス35度もしょっちゅう。それにステップ地帯からの冷たい風が都市部にも入り込んでくるため体感温度はマイナス50度くらいになります。南部の都市はもっと暖かいですが、それでも冬場はマイナスの気温。

それに比べてセルビアは冬場の最低気温がマイナス5度くらい。基本的に昼間はプラスの温度なのでロシア人にとっては暖かい冬を過ごせます。真冬でも新鮮な季節の野菜や果物が買えたり、ロシアの冬よりだいぶ軽装で外を散歩できるのは気分的にもお財布にも助かります。(雪があまり降らなくて悲しんでいるロシア人もいますが。笑)

セルビアに移住したロシア人の職業はIT系が圧倒的多数

セルビアはセルビア国民でも安定した職につくことが難しい経済難が続いている国です。なので、現地で仕事を探さずとも収入源がある人でないと厳しい

そういうわけで、ここに移動してくるロシア人は、圧倒的にIT系の仕事を持っている人が多いです。2022年だけで、セルビアでは2000以上の個人事業主がロシア人によって登録され、そのうちの大半はIT系の分野。すでにオンラインでの収入源を持っているフリーランスのデザイナー、プログラマーあるいはリモートで働けるITワーカー。そして、会社がセルビアに支社を設立し、会社の意向で移動した社員たちです。

こうしたIT系の職業を持つロシア人にとって、逆にロシアで生活を続けることは厳しいものになっています。

ロシアでは現在

  • MasterCard、Visaカードが使えず、オンラインでのサービスやアプリの購入なども困難
  • Upworkなどの海外フリーランスサービスが利用できないし海外から代金を受け取ることも難しい
  • Instagram、Facebookが使えないので、こういったSNSをベースに活動していたマーケター、ブロガーなどにとって死活問題

といった状況。セルビアに移住することで、上記に挙げたような問題が解決され、ロシアでは続けることが難しかったITの仕事を続けることができています。

ただ、「IT系だからセルビアに移住した」というよりは、前述のようなセルビアの経済状況から「IT系の仕事の人しかセルビアに移住するのが無理だった」と言うほうが正しい表現になると思います。

ロシア人の移住による、セルビアの生活の変化

個人的に感じる変化は実はあまり多くありません。街中でしょっちゅうロシア語が聞こえるようになったことと、家賃がこれからどうなるか心配していることくらいです。

不動産価格の急騰はかなり深刻で、統計研究所のデータによると住宅賃料は2022年に1.3倍の額になったとのこと。ただ別の情報では約2倍にもなっていて、どちらかというとその情報のほうが正しいような気がしてしまっています。

昨夏の時点で、知り合いの不動産の人が「16年不動産業界にいるけどこんなに急激に値段があがったことはない。」と言っていました。

私たちの住んでいるノヴィサドでは1年半前は250ユーロもあればそこそこのロケーションで、家具付きの家族向けのアパートが借りれました。今は同じ条件で探そうとすると350ユーロでも厳しいです。(我が家も賃貸物件に住んでいるので、半年後に迫る契約更新でどれだけ値段を吊り上げられるのか、いまからハラハラドキドキ)

ロシア人たちは、「明日出国して2日後にはどこかのアパートを借りていなければいけない」というような切迫した状況で出国するため、500ユーロ以上する「高額」の賃貸物件でも借りてくれます。モスクワなどの大都市からくる人たちにとってみればさほど高い物件でもありません。とはいえ、住んでいくうちに「ふっかけられてた」ことがわかり、より安い物件を探して引越したり、都市から地方へと流れていくケースも出ているようです。

ただ、知り合いの不動産の人の話によれば、「今のこの状況はいつかはなくなる、ロシア人の8割は数年のうちにセルビアから出て行ってしまう」とのこと。

移住してきたものの、ここでの生活に馴染めずにすでに本国に帰っていった人たち、さらに別の国に移動する人たちのこともちらほら聞きます。ここ1年で移住してきたロシア人は、セルビアという国が気に入って移住してきていた以前のロシア人たちとは違います。急いで出国せざるを得なかったその状況を受け入れ、急激な生活の変化に慣れていくのは、そう簡単ではないと思います。

半年後、1年後にどんな状況になっているのか。また機会があったら書いてみたいと思います。

2件のコメントがあります

  1. まりあな

    はじめまして。昨年よりノビサドに住んでいます。
    ロシアの方、とても増えてきましたね。
    子どもの幼稚園にもたくさんロシア人の方がいらっしゃいますが、外国人という共通項からか、みなさんとても親しくしてくださって嬉しいです。

    1. YUNA

      まりあなさん、初めまして!ノビサド在住の方からコメントいただけるとは!とても嬉しいです。
      ロシア人の方々が幼稚園にたくさんいらっしゃるとのこと、そしてみなさんがとても親しくしてくださっているとのことでよかったです!
      私も4歳になる子供がいるのですが、ここはセルビア人の方だけでなくロシア人など他の外国の方とも接する環境があって子供の成長にもよいのではないかと思っています。

      いつかノビサドのどこかでお会いする機会があったらうれしいです。コメントありがとうございました!

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