出産費用が無料のセルビア。現地医療サービス実体験レポート 0

この春、現在住んでいるセルビア共和国で長男を出産しました。タイトルにもあるとおり、現地では公立の医療機関を使うと妊娠〜出産までにかかる費用がほぼ無料私としてはかなり驚きだったので、実際「タダで産める」セルビアの医療サービスがどんなだったのか記事にしてみました。

なぜ日本でなくセルビアで産むことにしたのか

セルビアがまずどんな国かというと、旧ユーゴスラビアの解体後から経済的にかなり厳しい状況にあり、ここ数年は少し上向いてきたものの、ヨーロッパでは貧しい国の一つに挙げられる国です。

最近の医療レベルはイタリアに近いレベルになってきたとか聞いたことがありますが、現地の友人知人の話などを聞くと(医療事故のようなことばかり聞かされるので)なんとなく怖くて私達夫婦はセルビアに来てから三年間、病院にいかずになんとか過ごしてました(汗)。

こんな状況を考えると、日本に帰って出産するほうが良いのでは?と思ってしまいますし、実際、私もその選択肢を考えたこともありました。でも結局、現地で出産することにしたのはこんな理由がありました。

長期でセルビアを離れるわけにはいかなかった

そもそも子供を持つということを考えておらず、たまたま授かったため、子供ができたらどうするかということは全く考えていませんでした。夫の仕事の拠点はセルビアにあり、長期でセルビアを一緒にはなれるわけにはいきません。かといって、妊娠中~産後しばらく日本に一人で帰るとなると半年以上も家を開けることになり、それはちょっと…という感じでした。

帰国のフライトが厳しい

妊娠中でもまだ早い時期ならフライトは可能ですが、乗り継ぎも含めて長いフライトに耐えられるのか、ドアtoドアで24時間以上かかる道のりは妊婦には厳しいのではないか、産後に小さな子供とその長旅をしてセルビアに戻ってこれるのか、など、物理的な距離を考えると私には無理そう…と思ってしまいました。

日本での出産は高額!

トドメはお金のもの問題です。妊娠して初めて知ったのですが、日本では産後に出産育児一時金として自治体から40万円くらいもらえるものの、出産費用に同じくらい~それ以上かかるようです。母親には「妊娠から出産まで100万くらいはかかるわよ」といわれ絶句しました。。

子供を持つことを前提に家計を考えていなかったため、日本での滞在中にかかる費用(高い食費、交通費など)も全部ひっくるめて考えるとやっぱり無理だ…となり、あきらめました。

もちろん、セルビアの出産事情や医療事情によほどの疑いがあれば、やはり日本で安心して出産したほうがいいです。ただ、病気の手術などはセルビアではしたくないというのが本音なものの、産婦人科は大丈夫なんじゃないか、という思いがありました。なぜかというと、そこら中に子供がたくさんいて、妊婦さんもそこらじゅうで見かけるからです。これだけたくさんの元気な子供がここで生まれているなら大丈夫なんじゃないか、と。

日本での出産経験があれば、日本と比べてあーだこーだと比較してしまったかもしれませんが、実際振り返ってみると私としては総じて満足のゆく医療サービスでした。幸い、友人の一人が一年前に出産しており、良いお医者さんや産科を教えてもらうことができたのも手伝ってたと思いますが。

それに、なんといってもお金がほとんどかかりませんでした。

これだけのサービスが無料で受けられるなら十分!

という感じです。

セルビアでほぼ無料で出産できる理由

セルビアには国民健康保険があり、加入していれば公立の保健所や病院での診療に代金を払う必要はありません。つまりゼロ割負担ということです。我が家は夫が個人事業主のため、月々20ユーロ程度(2500円くらい)を家族を含めた保険料として払っており、健康保険証みたいなのも持っています。就労状況にもよりますが、パートタイムで働いていて雇い主が保険を払ってくれない場合は、一定の手続きをすると保険料を納めることなく、健康保険証を発行してもらうことができます。

前述のとおり、セルビアに来てからの3年間はこの保険証、まったく日の目を見ることがなかったのですが、妊娠したことでフル活用することになりました。

で、実際に妊娠中に通い始めた保健所の婦人科ですが、最初から最後まで一度も診療代を払うことはありませんでしたし、超音波検査から始まる各種検査も一つを除いて無料です。超音波検査では、通常の白黒のに加えて、4Dもあり、何度か赤ちゃんの顔を見せてもらうこともできました。

妊娠中にかかった費用

今でこそお金を払わなくていいことに慣れてしまったのですが、最初の検診に行くときは「一体いくらかかるんだろう…」と思い、念のため多めにお金を持って行ったのを思い出します。検診が終わって、窓口で次回の予約をして、さて幾らかなとドキドキしていたら、「じゃあ次回は●月●日●時です。さようなら」と言われてあっけにとられました。

妊娠中に支払ったものといえば、

  • 尿検査用の容器(30円弱)
  • グルコース(糖尿病検査用、100円弱)
  • 栄養剤とお茶(医師に進められたものだけなら月300円、個人的に購入していたものが月1500円)
  • 蕁麻疹の薬(500円くらい)
  • カンジダの検査(1300円くらい)
  • 交通費(バス代片道90円ほど)

以上(笑)。

ちなみに、私は一年間の一時ビザを持っている状態なのでバス代はタダになりませんでしたが、長期居住権や国籍保持者はバス代も妊娠中はタダになるようです。

出産にかかった費用

さて、妊娠中の診療や検査費用は無料なものの、さすがに産院での出産が無料なわけはないでしょう、と思っていたのが妊娠3~4カ月のころ。ところが、何人かの知り合いに聞くところ、「私は何も払わなかったわよ」というのです。そうこうしているうちに分かったことは

  • 公立の産院は基本無料(自然分娩、帝王切開とも)
  • 和痛分娩には5万円相当くらいの料金(無料のところもあり。医師が必要と判断すれば無料になることもあり)
  • 私立の個人病院は有料

という感じです。公立の産院は、比較的大きな病院が多く、24時間体制で受け入れをしています。知り合いのつてで担当医師が決まっているか、帝王切開などで日にちがあらかじめ決まっているわけでない限り、事前に産院に行く必要はなく、陣痛が始まった、あるいは破水した時点で病院へ向かうという制度でした。

出産から退院まで

産院の病棟からの眺め

私は友人の勧めでベオグラード中心部にある総合病院内の産院で出産することにしました。

その産院では12人の助産師さんが交代でスタンバイしているらしく、出産時は代わる代わる色んな医者や助産師さんが診に来てくれた感じです。

無事に出産を終え、入院部屋へと移動。私は自然分娩で特に問題もなく出産できた(二度と経験したくないくらい痛かったですが!)ので、産後すぐに赤ちゃんのお世話が始まる「ベビーフレンドリープログラム」というものが適用された5人部屋での入院となりました。出産二日目の朝10時から翌日の朝5時まで、2度の休憩をはさんでほとんど赤ちゃんと一緒の時間を過ごします。賛否両論あるプログラムですが、かわいい赤ちゃんがすぐそばで寝ているのを見るのはなかなかの幸せ。ただ、10メートル先のトイレに歩いていくのもままならない産後2日目はちょっときつかったです。。

食事はというと、日によって「これは旨い!」と思えるものと「まぁ食べれるか…」というものとムラがありました。でも量は十分で、パンには全粒粉のものを使ったり、野菜多めだったりと健康に良いものを出してくれている感じはありました。ケーキなどのおやつがでることも。個人的には食事は「無料なんだから十分すぎる!」という感じでした。文句があるとすれば、この一点。トイレとシャワー室の衛星面がちょっと辛かった。部屋にトイレとシャワー室がついているところもあるようですが、私は割と元気な人の部類に入ってしまったため、10部屋以上の女性が皆使う共同トイレとシャワー室でした。「無料だからしょうがない」ですが、普通の日本人にはちょっと厳しいレベルです。

入院中には、

  • 授乳の相談を受け付ける助産師さん
  • 注射や飲み薬を配る看護師さん
  • 検診をするお医者さん
  • 赤ちゃんにミルクをあげる看護師さん
  • 赤ちゃんに必要なものを配る看護師さん
  • 清掃員さん

などがかわるがわる部屋を訪れ、十分にケアされていると感じることができます。入院中は、世話好き、外国人に優しいセルビア人の皆さんですから、同じ部屋の人たちが分からないことを色々教えてくれたり、看護師さんや助産婦さん、お医者さんたちも皆、フレンドリーで安心して過ごせました。

入院した部屋の様子

で、実際に入院中に支払ったのは

  • パンパース一袋とウェットティッシュ一袋(入院中の赤ちゃんが使えるように皆が寄付する感じ)
  • キオスクで買った水やお菓子などのお金
  • タクシー代

以上です(笑)

同じ部屋にいた人は、対応が悪いだの何だのと文句を言っている人もいましたが、私としては「無料なんだから少しは目をつぶれば?」という感じでした。

 

さらにセルビア国籍なら、一人目の子供には10万円ディナール(10万~11万円相当)を一括で、二人目以降は月に一万円ディナールを二年間もらえるそうです。現地の平均所得を考えれば、日本の出産育児一時金と同じくらいの価値はあると思います。私たち夫婦は現地で二人とも外国人なのでもらえませんが、それでも、セルビアの健康保険で妊娠~出産費用をほぼ全てカバーしてもらえたのは本当にありがたいものでした。

私が住んでいる家から徒歩10分圏内に、同じ時期(前後1カ月)に出産した人が知っている限りで3人います。それくらい、この国で多くの女性が出産しているのは、子供を大切にする文化、先のことを考えすぎないメンタリティに加えて、費用のことをあまり真剣に考えすぎなくていい制度になっているからではないか、と感じました。

長いようで(きっと)あっという間の育児生活が始まりました。機会があったら現地の子供の医療ケアについても記事にしてみたいと思っています。最後まで読んでくださりありがとうございました。

Thanks for sharing!
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